芝浦製作所(SEW)扇風機修理-2

先日、某オークションサイトにて水色に全塗装された芝浦扇風機を発見。
このような色に塗装されていたのが災いなのか?幸いなのか?
適当に入札していると・・・なんと落札!
これはまた、やるしかないなと・・・レストア作業(^^ゞ
2016年7月末日よりレストア作業開始。
一年半ぶりやね。


右側が前回のレストア完了品で
左側が今回落札した扇風機です。
前回の扇風機との違いですが
羽根のガード形状が少々違います。
ガードは結構簡素で共に初期型ですが
ガードの外周部ワイヤーが2本に
なっているので次モデルのようです。
これらの芝浦扇風機の説明は前回のページで
簡単ではありますが記しておりますので
割合させていただきます。

レストア作業行程ですが前回は冬季始まりで
本体塗装は気温が安定する5月まで待ちました。
今回は夏季始まりなので本体塗装から
始める事にしました。
羽根の塗装剥離は冬でもOKですから。

では早々にレストア作業に取り掛かる前に
外観検査ですね。
正面からの写真でも分かりますが
モーター部が向かって右側に
少々曲がっています。
どんな外力が加わったのか?
落下したのか?
羽根ガードの変形は通常使用範囲と
思われます。
羽根も曲がっていないような?


背面外観ですが
首ふり装置と本体とを接続する
リンク部のボルトが現在のステンレス小ねじに
変更されています。しかも接着剤で・・・
それからもう一つ
首ふり装置のすぐ横にあるモーター軸受の
給油口が破損しています。
よく見ると給油口の鋼球が陥没しています。(T_T)
酷い給油するね・・・
後の分解作業で壊れた原因が分かりました。
お楽しみ・・・

それでは、ぼちぼちと分解作業に取り掛かります。
作業手順、構造は前回に経験済みで
見本が隣にあるため気楽に進めそうですが
安心していると思わぬ落とし穴が・・・笑
注意が必要です。
分解前ボルト類にCRCを吹き付け一時間待つ。
錆付いたボルトは要注意です。
無理に緩めない。折れ込むと厄介です。

分解の結果ですが
扇風機の取っ手部分のボルト2本が錆付いて
いました。
一番苦労したのが
羽根の取り外しでした・・・
羽根を固定しているセットボルトを外しても
一向に外れない?CRCもたっぷり吹き付け
何度試みても外れない?
酷く叩く事もできず
格闘する事・・・一時間!
少しづつ外れてきました。
やっと外れた時に
原因が判明!
なんとこの水色の塗料が羽根と軸の
隙間に侵入!
羽根を接着固定していたのです。
前オーナーは分解せずに
このまま塗装したようです。
よけいな事を・・・( `ー´)ノ


既設塗装の剥離作業です。
前回と同じくカッターナイフでの剥離作業です。
前オーナーが吹き付けた塗料がモーター内部の
コイルにまで付着していますが
これは諦めます。下手に擦ると断線します。


本体ベースとモーター背面カバーです。
ネームプレートまで塗装してしまうとは・・・
なんと言う作業の粗さ!
今思えば・・・この水色塗装のおかげで
地金が腐食せずに結構きれいです。
保護膜みたいなものです。
磨けば光るタイプ?期待します。


モーター部が右側に曲がっていた原因です。
やはりシャフト先端部が曲がっていました。
それと首ふり装置部とリンク部取り付け部は
固定ボルト穴が破損していました。
よく見るとこの部品ですが
亜鉛ダイカスト製品のようです。
1号機は鋳鉄製なのが2号機では亜鉛ダイカスト製に
変更されているようです。(簡単に大量生産できる?)
亜鉛製によるタップ穴の強度不足+シャフトの曲がりによる
負荷によってタップ穴が破損・・・こんなシナリオを
想像してしまいます。どうりでリンク部品もひねりと
曲がりが発生しています。まずは負荷の軽減です。
シャフトの曲がり修正は必須ですね。



この画像を見て下さい。
これは完全に製作不良品です。
返品扱いです。( `ー´)ノ
給油部のオイルカップを取り外してみました。
オイルカップの取り付け用の穴加工は
完了しているのに軸受メタル(真鍮)部に
貫通穴が無い!これじゃ給油できない( `ー´)ノ
だから前オーナーは給油穴が詰まっていると
勘違いして給油口をほじってしまい
給油カップの鋼球を陥没させてしまった・・・
これが破損させた原因です。(^^ゞ
それにしても今まで軸が焼き付かなかったのは
首ふり装置ギヤのグリースが隣にあったため
でしょう。モーター前面の軸受なら
完全に焼き付いていたでしょう。
そうそう!今思い出しましたが
モーター前面の給油壺も中身のフェルトが
ありませんでした。1号機に付いていた
フェルトがオリジナルの保証はありませんが
何らかの油を吸い上げ給油できる物が必要です。
また、対策品を自作ですね。


ネームプレート部の水色塗料を剥離してみました。
黒色塗料を剥がさないように注意しながら
上塗り塗料を剥がしたのですが
こんな状態です。
あまりきれいじゃないね。
再塗装もいいのですが
文字の凹凸が少なく
研ぎ出し?が困難です。
<20160820更新>


9月の連休に塗装しようと計画を立てていたのに
台風16号の影響で連日の雨つづき・・・
この機会を逃すと10月の連休まで作業ができそうにない。
雨の日は湿度が高く塗装に失敗するリスクはありますが
やむをえず決行!<気温25度、湿度86%、9:00>
水色の塗装剥離から1か月が経過すると
なんと鋳物表面にうっすらと錆が発生!
もう一度磨き直し作業です。
やり直しはつらいね・・・(T_T)
この工程が終了して、これからが本日の
メインイベント?です。
必要部分にマスキング。
吊り下げて塗装が出来る様に針金を通します。


今回使用するパーツクリーナーは塗装前の脱脂剤に・・・
プライマー処理と・・・ちょっと贅沢仕様かな?
どちらにしても小さい部品なので
少々の贅沢はいいでしょう・・・(^^ゞ



前回と同じく
自宅の物置で塗装をしました。
ここで問題が発生!
原因はやはり湿度でした。
塗装前の脱脂作業で部品が冷却され
結露が発生!水分を拭き取り
ドライヤーで温める・・・
こんな日はやはり塗装日和ではありません。
昼頃になると物置の気温も上昇して30度くらい
湿度75%程度・・・今がチャンス!っとばかり
一気に塗装しました。
上の写真はプライマー塗装です。
上塗り前に軽くペーパー掛けを忘れずに・・・
仕上がりがきれいになります。



埃が付着しない程度に乾燥したところで
自宅内に移動しました。
脚立にぶらさげて後はしっかり乾燥させます。
あの水色扇風機がようやくオリジナルの黒色に
戻りました。<20160922更新>



一週間ぶりに乾燥のため脚立にぶら下げていた
部品のマスキングを剥がしてみました。
今週末も天気予報は雨降り・・・
先週に塗装を決行しておいて正解でした。
ついでにローターも塗装しておきました。
外周部は本来なら金ニス塗装でしょうが
クリアラッカーで代用しました。
側面も黒色を再塗装・・・
新品モータのようです。
ステーターコイルに付着している
水色塗装剥離は あ・き・ら・め・る (^-^;



モーター首ふり部の軸曲がりも修正しておきました。
これで首ふり時の負荷が無くなり
スムーズに回転してくれます。
モーター背面カバーの給油部です。
軸受メタル(真鍮部)に貫通穴をあけました。
ようやく給油口が本来の役目を果たしそうです。

前回と同じように組み立て前に
モーターと調速用コイルの電気抵抗値を
測定しておきました。
(1号機の図面参照)
※モーター部
 A-B間 223.5Ω
 B-C間 43.1Ω
 C-A間 216.8Ω
※調速用コイル
 1-2間 3.1Ω
 2-3間 3.9Ω
 3-4間 4.1Ω
 1-B間 7.0Ω
前回の1号機とほぼ同じ
数値となりました。
<20160928更新>


本体を組み付けてみました。
モーター首ふり部の軸曲がりを修正し
動きはとってもスムーズです。

前回の1号機組み付け時も気が付きませんでしたが
この扇風機に使われているボルト類は
どうやらインチねじのようです。
ネットで調べた結果が以下のとうりです。
※ユニファイ(UNF)ねじ No.10(#10)
 ねじの外径 φ4.8mm(最大)
 ピッチ 32山(0.79mm)
 ねじ山の角度 60°
ほとんどメートルねじのM5x0.8規格と同じです。
もともとはアメリカのGEと技術提携し
日本のSEWが製作した機器のため
インチねじを採用したものだと思います。

なぜこんな事に気が付いたって・・・
モーターの四隅に付いている長ボルトには
M5x0.8ナットが入るのに
首ふり装置を固定している3本の
ボルト穴にはM5x0.8ボルトが入らなかった
からです。
なぜ?不思議に思い調べてみると・・・
インチねじだったと言う結果です。
もしボルト類を交換する時は
注意が必要ですね。(^^)/

この状態で一度電源を入れてみました。
回転はとってもスムーズ。
これで本体と電源回りは完了です。
<20160930更新>

今回は1号機にはあって2号機には無かった(紛失?)
モーター前面の給油装置を自作する事にしました。


油を吸い上げ軸に給油出来るもの?
1号機に付属していたフェルト状の部品を探して
みましたが適当な物がありませんでした。
ふと、思ったのがマジックのペン先?
早々に書けなくなったマーキーを発見!
どうやら細書き部分のペン先が使えそうです。
シンナーの中にペン先をつけて十分に色を抜き
プラスチック部分と先端を少々カット・・・
日用品店で買ったステンレスばねを改造して
給油装置を自作しました。
1号機とそっくり?な物が完成!


ローターをはずして給油フェルトが、ばねの力で突き出て
いるか確認します。楊枝でフェルト部分を押してみます。
ぴょこぴょこと動けば完成です。(^^ゞ


それにしてもこのモーターの軸受の給油方法には感心します。
大正期にしては良くできている・・・
軸受前後の余った油を回収できる様に工夫されて
います。中心の大きい穴が給油用。
前後の小さい穴が戻り油用です。
軸受の形状と穴位置が良くできています。
フェルトの油の吸い上げが良さそうなので
今回も給油はミシン油を使用します。
<20161003更新>

またまた給油口の不具合を発見!
今度は余った油を排出する油道の不具合です。


見本に楊枝を刺しています
モーターの背面カバーと首振り装置部です。
モーターからの余った油は首振り装置へと流れて行き
下部の首振りリンク部の受け皿に貯まる構造の
様ですが右側の楊枝の刺さっている部分に
円柱状の鉄片が刺さっていました。

これです。直径φ3mm程度、
加工途中の折れたドリルが刺さっているのかと
思ったのですが違うようです。
誰が何のために・・・意図的に?
この扇風機のモーターは、背面の給油構造に
ほんと不具合が多いです。( `ー´)ノ
※芝浦製作所の転覆を企てる者の犯行か?
 な~んてね・・・(^^ゞ

リンク部のボルトも最初は接着剤止めでしたので
新たにM6のねじを切り黒染めのキャップボルトで
固定してみました。
なんとなく違和感無く収まりました。
<20161006更新>


ようやくガードのレストア作業まで
こぎ着けました。
水色と黒色の塗料剥離作業を前回と同じく
カッターナイフでごしごしと
後はサンドペーパーで磨き作業!
結構きれいになりました。
ついでにガードの変形も
少々修正して・・・

このガードも結構簡素で
塗料剥離作業も楽ですが
後のガードで
通称 すいれん と呼ばれる
ガードなら剥離作業も
大変そうですね。

黒色塗装をしてみました。
1号機と同じくハケ塗りで
ぺちゃぺちゃと
ラッカー塗料なので
乾燥時間も数分で
結構簡単です。
センターキャップも
いかがでしょうか?
今回のセンターキャップ塗装は
最終クリアラッカー塗装を
施してあります。

SEWのロゴは当分の間
つやつやで輝いているでしょう。
これってアンティークじゃないね。
きれいになり過ぎだわ・・・(^^ゞ

羽根も無いのに
ちょっと本体に
取り付けて
みました。
完成気分???(^^ゞ
<20161016更新>

いよいよ最終作業となります。
羽根の塗装剥離です。
塗装剥離をして研磨すれば
完成と軽~く考えていました。
この作業がこんなにも大変だとは
思いもしませんでした。
1号機の羽根とはずいぶん違いました。


これが問題の羽根です。
水色に塗装されていて
剥離すればOKだと・・・


写真でも分かりますが
この羽根には元の黒色塗装がありません。
なぜ?以前に黒色が剥離されたのか?
羽根が交換されているのか不明です。
既設の水色塗装はカッターナイフの背で案外楽に
剥離できたのですが
肝心の真鍮羽根の表面が腐食しています。
この腐食が後々の研磨作業に悪影響です。(T_T)
こんな事なら厚く塗装されていた方が地金がきれいで
助かるのですが・・・


最初は#800程度のサンドペーパーで研磨
してみたのですが
表面の腐食が消えない。
結局#320での荒削りを余儀なくされました。
最終#2000~バフ研磨までの作業に
丸一日かかってしまいました。(T_T)


いかがでしょうか?
やっとこせで完成です。
あの水色扇風機が
黒色に変身です。
冬が来る前に完成出来て
良かったね(^^ゞ
1号機の羽根は少し曇って
程よい金色です。
この2号機の羽根も
一年もすれば渋い金色に
なる事でしょう・・・

本当はもう一つ作業が残っています。
ポニーキャップコンセント?
違います・・・

モーター背面の給油口
玉入れオイルカップの打ち込みです。
モノタロウにあるのですが
未だ注文していません。

ちょっとだけ作業を残すな!( `ー´)ノ
今年中に注文ね・・・

<20161024更新>